孫の「話したい」を引き出す祖父母の対話術:親世代との関係も育む「聴く」姿勢
親子の対話レッスンにご訪問いただき、ありがとうございます。専門家ライターがお伝えする本記事では、祖父母の皆様が孫やその親御さんとの関係をより豊かにするための対話術について深掘りいたします。
孫の成長を見守る中で、「もっと孫と心を通わせたい」「親御さんとの世代間の考え方の違いをどう埋めれば良いだろうか」と考えることは少なくないでしょう。現代の子育ては、以前とは異なる価値観や情報に基づいて行われています。そのような中で、祖父母としてどのように孫の心に寄り添い、また親御さんの子育てを尊重しながら関わっていけるのか。その鍵となるのが「聴く」という姿勢です。
なぜ今、「聴く」ことが大切なのでしょうか
現代の子育てでは、子どもの自主性や自己肯定感を育むことが重視されています。そのため、子どもが自分の気持ちや考えを安心して話せる環境を整えることが、親御さんの願いの一つです。祖父母の皆様も、学校現場で子どもの成長を支えてこられたご経験から、子どもが安心して自己表現できる場がいかに大切かをご存知のことと存じます。
「聴く」という行為は、単に相手の言葉を受け止めるだけではありません。それは、相手の存在そのものを認め、尊重する姿勢を示すことに繋がります。孫に対しては、「あなたの話には価値がある」というメッセージを伝え、安心感と自己肯定感を育む土台となります。
また、親御さんとの関係においても、この「聴く」姿勢は非常に重要です。親御さんは、ご自身の考えに基づいて子育てをしています。祖父母がまず親御さんの話に耳を傾け、その考えを理解しようと努めることは、世代間の信頼関係を深め、健全な協力関係を築く上で不可欠です。良かれと思ってのアドバイスも、まずは相手の状況や気持ちを「聴く」ことから始めることで、より建設的な対話へと繋がるでしょう。
祖父母が実践できる「聴く」対話術の具体的なヒント
それでは、日々の生活の中でどのように「聴く」姿勢を実践していけば良いのでしょうか。ここでは、具体的なヒントをいくつかご紹介いたします。
1. 身体全体で「聴く」姿勢を示す
孫がお話をしている時は、孫の方に体を向け、目線を合わせることが大切です。うなずいたり、相槌を打ったりすることで、「あなたの話を聞いていますよ」というメッセージを伝えることができます。
- 実践例:
- 孫が絵を見せてくれたら、体を少しかがめて目線を合わせ、「どんな絵を描いたの?」「この色、きれいだね」と優しく声をかけながら、描いたものについて話を聞く。
- 孫が今日の出来事を話している時、作業の手を止め、孫の方に顔を向けて「うん、うん」と相槌を打つ。
2. 相手の言葉を最後まで受け止める
つい、途中で自分の意見やアドバイスを挟みたくなってしまうかもしれません。しかし、まずは相手の言葉を最後まで遮らずに聞くことを心がけましょう。「でも」「だって」といった否定的な言葉を挟まず、一言一句を大切にする姿勢が、相手に安心感を与えます。
- 実践例:
- 孫が「今日、学校で嫌なことがあったんだ」と話始めたら、途中で「どうせ〇〇でしょ」と決めつけず、まず最後まで話を聞く。
- 親御さんが子育ての悩み事を話している時、焦って解決策を提示しようとせず、まずは全てを聞き終えることに集中する。
3. 感情に寄り添う言葉を添える
相手の話を聞く中で、その人がどんな気持ちでいるのかを想像し、その感情を受け止める言葉を返しましょう。評価や判断を伴わない、共感の言葉が心を繋ぎます。
- 実践例:
- 孫が「かけっこで一番になれなくて悔しかった」と言ったら、「そうか、悔しかったんだね」と感情を繰り返す。
- 親御さんが「最近、子育てが大変で…」とこぼしたら、「そうなのですね、お疲れ様です」と労いの言葉をかける。
4. 質問の仕方を工夫する
相手がより深く話せるような質問を心がけましょう。「どうして?」と理由を尋ねるよりも、「どんな気持ちだった?」「その時、何を感じたの?」といった、感情や状況を深掘りするオープンな質問が、対話を豊かにします。
- 実践例:
- 孫が「友達と喧嘩しちゃった」と話したら、「何があったの?」と事実だけでなく、「その時、どんな気持ちだった?」と感情について尋ねる。
- 親御さんとの会話で、子育ての方針について気になることがあれば、「〇〇については、どのように考えているの?」と、意見を聞く姿勢を示す。
5. アドバイスは求められた時に
祖父母としての経験や知恵は、とても貴重なものです。しかし、それを押し付ける形ではなく、相手が助言を求めてきた時に初めて、静かに、そして具体的な例を交えながら伝えるようにしましょう。
- 実践例:
- 孫が「どうしたら逆上がりができるようになるかな?」と聞いてきたら、具体的な練習方法や励ましの言葉を伝える。
- 親御さんから「〇〇について、どうすれば良いか教えてほしい」と相談されたら、ご自身の経験を優しく話す。
まとめ
「聴く」という対話術は、特別なスキルというよりも、日々の心がけと練習によって育まれるものです。この姿勢を大切にすることで、孫は安心して自分の気持ちを表現できるようになり、自己肯定感を育むことができるでしょう。そして、親御さんとの間にも信頼関係が深まり、互いの世代が協力し合える、より良い家族関係を築くことに繋がります。
焦らず、できることから少しずつ実践してみてください。皆様の温かい「聴く」姿勢が、孫の心を大きく育み、家族の絆をより一層深める力となることを心より願っております。